不動産投資ブームはすでにピークを過ぎていることは不動産会社のセールスデータから明らかになっています。
しかし、仮に住宅価格がまた上がり始めたとしたら、不動産市場の過熱感を冷やすためにニュージーランド準備銀行(以下RBNZ)は断固とした措置をとることを示唆しています。
その措置というのが、泣く子も黙る、Debt to Income Ratios(以下DTI)です。
すでに実施されているLoan to Value Ratios (以下LVR) は「不動産価格」に対して借りられれるお金の額を制限したものでした。
例えば、初めて自宅として住宅(新築以外)を購入するFirst Home Buyer(以下FHB)は「20%」の頭金でモーゲージを組むことができます。
一方、賃貸物件にする予定で投資家が不動産(新築以外)を購入する場合、頭金が「40%」なければローンを申請できません。
<FHB>
①不動産価格 $500,000
②頭金 $100,000(LVR ①×20%)
③ローン $400,000
<投資家>
④不動産価格 $500,000
⑤頭金 $200,000(LVR ④×40%)
⑥ローン $300,000
LVRによって不動産投資のハードルは一気に上がり、投資マネーはオークランドから地方へ向かい、ハミルトンなどは不動産価格が大きく上昇する結果となりました。
自宅購入者は、投資家に比べれば有利な条件でローンを得られますが、借入が大きすぎると、かつてのように金利が8%や9%へ上がった場合、返済不能に陥る可能性があります。
そこでRBNZは、不動産購入者の「収入」に対してローンの限度額が決まるDTIを将来的に導入することを検討しています。
すでにDTIを実施しているイギリスでは住宅ローンの限度額は年収の「4.5倍」です。RBNZの場合はイギリスより少し緩めの「5倍」で検討している模様です。
自宅用の住宅ローンを組む場合、LVR(頭金よる制限)とDTI(年収による制限)は以下のように影響します。
①不動産価格 $500,000
②頭金 $100,000(LVR ①×20%)
③ローン $400,000
④必要年収額 $80,000(DTI ③÷5)
ニュージーランド人の家計年収(職業や地域で差がありますが)の中間値は$70,000くらい(結構高い)です。
上の例ですと、年収が$70,000あったとしても、$500,000の住宅を買うには、頭金をあと$50,000増やすか、年収を$10,000アップさせる必要があります。
投資家の場合は、複数の物件を持っていることも多く、その分、Owner Occupier(自宅購入者)よりも借り入れが大きくなっています。
そうした投資家の中には、DTIによって新規投資用の融資を得られるチャンスがなくなり、不動産以外の投資対象にシフトする人も出てくる可能性があります。
RBNZの試算では、DTIによって自宅購入者 2,000人、投資家 9,000人の合計11,000人/年が住宅購入を見送ると見積もっています。
需要の減退によって住宅販売数は9%ダウン、住宅価格も2%〜5%下落することも合わせてRBNZは試算しています。
不動産はキャピタルゲインするものだというのがこれまでの常識で、個人が安定的な資産運用をするには比較的適した投資対象でした。
しかし、当面キャピタルゲインはしにくい状況が続き、仮に住宅価格の上昇が始まればRBNZは躊躇せずにDTIを実行し、上昇機運にフタをすることでしょう。
ニュージーランド(特にオークランド)の不動産マーケットはまさに冬の時代を迎えることになりそうです。
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