日本の不動産投資についてのニュースを読んだ感想です。
毎日新聞によると個人が建設する賃貸住宅への地方銀行の融資残高が2009年の統計開始以降、過去最大の13.8兆円になった模様。
「13.8兆円になった」なんて簡単に書いてありますが、ちょっとした国の国家予算に匹敵するような金額です。
地方には優良な融資先企業が少ないため、地方銀行は、ただでさえ低い金利をさらに下げるような過酷な競争に晒されています。
追い討ちをかけるように日銀のマイナス金利導入。どうにもこうにも利ざやを稼げなくなった地方銀行は軒並み減収に陥ってしまいました。
そんな中、地方銀行が新たな融資先として白羽の矢を立てたのは、相続税対策を考えていた「個人」です。
個人の財産継承に大きな影響を及ぼす相続税が改正され、「基礎控除」については平成27年から以下のように変更されました。
<改正前>
5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)
<改正後>
3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
詳しく説明すると長くなるので端折りますが、かつては資産持ちにしか課税されなかったイメージの相続税が、「普通の人」にも課税されるようになりました。
相続税を算出するにはまず資産価値を評価します。預金はそのままの額で評価されてしまいますが、土地は路線価で評価されます。
そこにアパートを建てると土地の評価額は20%も減額されます。
アパート(建物)の固定資産税評価額も購入価格より大幅に下がり、さらに貸し付けることで評価額は「30%減額」となります。
「アパートを建てることは相続税を減免(または回避)するだけでなく、家賃という新たな収入を生み出すことができます!」
「サブリースだからやることは通帳を眺めているだけでOK。低金利の今がチャンスです!」
そんな営業トークをするかどうかは知りませんが、将来起こりうる「リスク」のことをどれだけ想定しているのか甚だ疑問です。
日本で人口密度がもっとも高い地域といえば東京23区が思いつきます。その23区でもアパート空室率は35%を超えており、賃貸アパートは飽和状態です。
人口減少が続く地方では新たな賃貸物件が増えるにつれ空室リスクも倍増するので、想定家賃収入は極めて悲観的に見ておいてちょうどよいくらいでしょう。
私の実家は典型的な地方の小さな町にあります。近所の方が相続税対策でアパートを建てて、昨年から賃貸経営をはじめましたが、新築から1年以上経っても9戸のうち4戸しか部屋が埋まらないと嘆いています。
低金利も永遠に続くものではありません。不動産投資の借り入れは金額が大きいため、金利が上がれば収益が一気に圧迫されます。
建物は古くなるにつれメンテナンス費用がかさむようになります。定期的な修繕用に家賃の一部は積み立てておかなければ、いざという時に「お金が足りない!」ということになってしまいます。
近隣に新しいアパートが建てば、家賃はそこより低くせざるを得ません。
さらに競争に勝つためには、敷金・礼金なし、初月賃料サービス、ペットはもちろんOK!なんて特典は当たり前のように追加する必要も出てくるでしょう。
賃貸アパート経営全てを否定するつもりはありませんが、かなり濃いレッドオーシャンに素人が飛び込んで長期的に勝ち続けられるほど甘くはないと思うのです。
単純に税金対策になるからといって数千万から億の金額を投資し、不良債権化する可能性が低くないアパート経営を始めるなんて、私には正気の沙汰とは思えません。
赤の他人(不動産業者や銀行など)が美味しい儲け話を持ってくることはないことは普通に考えればわかることです。
13.8兆円もの莫大な金融資産が泡と消えてしまわないことを祈るばかりです。
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